「神からの使者」が与えてくれたもの
あくまで私の勝手な解釈ですが、
「猫の神様に送り込まれた猫」として、我が家の一員となった胡桃。
しばらくは体調の心配もありましたが、幸いにも毎日快食快便で、オシッコもしっかり。
別室からは、毎晩のように「出せー」の声。
リビングの賑やかさが、うらやましかったのかもしれません。
このままでは近所迷惑となってしまいかねないので、
ワクチンの予定を早めて、晴れてリビングに合流となりました。
◆まったく遠慮せず。容赦もせず
胡桃がリビングに入ってきた瞬間、
蜘蛛の子を散らすように(2頭ですが)逃げていった先住猫たち。
しばらく警戒した後、恐る恐る、少しずつお互いのにおいを嗅いだり、鼻先を合わせたりしながらコミュニケーションを取っていきます。
ただ、知らない猫との触れ合いは、外での経験が豊富な胡桃に一日の長があり、
反応が悪いと容赦なく「ビシッ」と一撃する、肝っ玉の強さ。
リビングの雰囲気にもあっさりと慣れ、段ボール箱、タワーの上、ベッド、テレビ台、炊飯器の裏、私のひざの上……誰が使っていようと関係なく、あらゆる場所に足を踏み入れていきます。
驚くことだらけの振る舞いでしたが、「先住猫優先」の扱いは変えられないため、胡桃をしばらくの間、ケージの中で寝させることにしました。夜中、胡桃は猛然と抗議していましたが(笑)
◆同居猫の心を変えてくれた
いちばんの心配は、我が家に最初に来た猫、たま胡でした。
ひとりが好きな子ですが、別に他の猫が嫌いというわけではなく、付き合い方が分からないタイプ。人見知りならぬ「猫見知り」なのです。
相手に強く出られたら遠慮してしまう面もあって、私が見ていないところで、胡ぶへいにいじめられることもありました。
胡桃に対してもすっかり恐れおののいていましたが、
同じ性別で、推定年齢も上である胡桃が見せた「気づかい」によって、この関係がいい方向に働いていきます。
たま胡が見ている目の前で、いや、たま胡に見せるように、胡ぶへい(右)をかわいがる胡桃。
「たまちゃん。コイツ、弱いよ。弱っちぃよ」と、
伝えているようにも感じました。
たま胡のごはんを盗ろうとする胡ぶへいを、胡桃が撃退する時もあって、
一定の距離は取っていても、胡桃に対する安心や信頼の気持ちが芽生えていきます。
おかげで、胡ぶへいとのパワーバランスも少し改善されて、逃げるどころか、反撃することも多くなりました。
胡桃が加わったことで、引っ込み思案だった たま胡の心を変えてくれたのは、
私にとって、泣けてくるほどにうれしい出来事でした。
◆胡桃のおかげで、みんなが添い寝!
胡桃の大きなお手柄は、もう1つあります。
たま胡と胡ぶへいは、撫でることやブラッシングは問題なくできますが、唯一、猫と暮らす人間にとっての夢である「添い寝」だけは、まだ叶えられていませんでした。
しかし胡桃はここでも、何の遠慮もないまま我々の寝床に上がり込み、
熟睡……
朝寝も昼寝も夜寝も、ヘソ天で鼻いびきも高らかに、ぐっすり眠る毎日。
すると、これに触発されたのか、
他の猫たちも入れ替わり立ち替わり、寝床に入っていくようになります。
我々がいない時だけでなく、消灯後にも枕もとへ来るようになり、
添い寝なんて絶対にしてくれないと思っていた たま胡まで、
(長くて10分ですが)私の隣で寝てくれる、至福の時間を過ごせています。
◆「前向きな変化」と「多くの幸せ」
これ、やってもいいんだ。
あれ、なんだか面白そう。
我が家にいる猫たちは、人間だけでなく、他の猫の行動もしっかりと見ています。
そして、楽しそうだなと思ったら、同じように真似することも少なくありません。
ウチに胡桃が来て、本当に良かったなと思うのは、多頭飼いの楽しさだけでなく、先住猫たちにも前向きな変化を与えてくれたことです。
視野と行動範囲が広がり、我々との距離もさらに近くなって、
3頭みんな、それぞれに毎日を楽しんでいるのが、私には何よりうれしく感じます。
多頭飼いに、いろんな大変さは付き物です。
でも、新しい気づきや発見の連続によって、猫という生き物の魅力をより深く知ることができるのは、間違いありません。
ウチの場合は、神様から送り込まれた3頭目でしたが(笑)
正直、悪いようにはしてくれなかった。
むしろ、多くの幸せを与えてくれた。
私は心から、そう思っています。
松尾 猛之(まつお たけし)
ねこライフ手帳製作委員会委員長。1級愛玩動物飼養管理士。
webライター、ペット用品メーカー勤務などを経て、2019年2月に愛猫のための生涯使用型手帳「ねこライフ手帳 ベーシック」を発売。手帳の普及を通じて、人間が動物との暮らし方を自発的に考えていくペットライフの形を提案している。自宅では個性的な保護猫3頭に振り回される毎日。