コラム:今日も、猫に学ぶ。(1)

コラム記事 コラム

愛があるから「愛猫」なのです

はじめまして。ねこライフ手帳製作委員会の松尾と申します。

猫歴は今年で7年目。キャリアはまだまだこれからの私ですが、現在保護猫3頭と暮らしており、日々のお世話に振り回される中にも、楽しい時や心安らぐ時を感じながら、少しずつでも着実に猫経験値を上げている毎日です。どうぞよろしくお願いいたします。
松尾 猛之

ペット業界に導かれたキャリアチェンジ

猫歴が始まる前の私といえば、猫はおろかペットそのものと繋がりのない生活を送っていました。

それがペット用品メーカーで働くことになるという巡り合わせをきっかけに、自分の人生までガラリと変わることになります。

 

たまたま訪れた譲渡会で、偶然に出会った保護猫を家族として迎え入れてからペットライフへの見識が一気に広がり、公私ともに猫や犬などの家庭動物と関わる密度が濃くなる中で、芽生えた問題意識を何らかの形にできないかと思って会社を飛び出し、家庭にいる猫のために記録、活用する手帳(ねこライフ手帳)を製作。個人事業としての活動を始めることになりました。

ここまで時間にしてわずか3年半。今思えば、あまりにも無鉄砲すぎる行動力です(笑)

現在は出来上がった手帳を通して猫を愛する方々、そして動物に携わる多くの方々とのご縁を頂戴する日々を送っていますが、所詮は素人同然のレベルからほぼ突発的な思いつきだけでここまで来た私。振り返るといろんな「巡り合わせ、偶然、ご縁」に背中を押され、手を引かれ、助けられながら今の自分があるように感じています。

 

あれもこれも、猫は人間より優れている。

私の人生における運命的な存在として突如現れた「猫」ですが、
私が今日も、この瞬間も、猫たちと暮らす時間を重ねている中で素直に思うことがあります。

我々人間が高等動物であるなんて、いったい誰が決めたのだろうと。

手足の動きと言語が発達している人間がこの世の経済を回している、という事実がある以上は致し方ないのかもしれませんが、ひとつ屋根の下で猫たちと身近に接し、猫という生き物を少しずつ知っていく中で、人間が「猫にはかなわない」と感じる場面の何と多いことか。

優れた嗅覚や聴覚、広い視野に柔軟な身体、並はずれたジャンプ力や瞬発力……猫には人間が持っていないさまざまな感覚や能力を備えています。

さらには決定的なポイントとして「ひげ」という、人間がその使い方を知ることも体感することもできない器官まで持ちあわせています。

学力や偏差値という物差しではなく、猫が人間よりかしこい、頭の回転が速いと感じることの多さには、ただ感心するばかりです。

そうなると、必然的な話になりますが、猫が人間にない感覚や能力をたくさん持っているのであれば、人間に見えていないもの、聞こえていないもの、そして人間が自ら知ることのできない物事のいくつかを猫がきちんと察知している可能性は高い、いうことになりますよね。
終生飼養

猫への「上から目線」から生まれる悲しい愚行

猫と暮らすようになってから、人間に生じる心の変化はそれぞれですが、私の場合は好奇心が膨らむ一方となり、人間にとって未知の物事を猫がその存在をもって教えてくれているのであれば、これを疑うことなく素直に受け取ろうと思うようになりました。

そして今日も明日も、猫の感覚に少しでも近づきたいという思いで私は暮らしているのですが、世の中には「人間は猫より偉い」という見識で自分勝手な都合をぶつけ、残念な行為を働く輩が数多くいるようです。

面倒を見きれないからと飼育放棄したり、引っ越し先まで連れて行けない理由で放置したり、不妊手術をしないまま飼い主の責任からも逃げようとすることでの多頭飼育崩壊、理不尽なストレスのはけ口にされてしまう虐待など……

 

猫を「抵抗できない弱いもの」と決めてかかった人間の愚かな行為をニュースで見る度に、この人たちにとって猫や犬などの動物が存在する意味を考えてしまうと、ただ悲しい、切ないという感情しか湧いてきません。
愛猫

幸せな終生飼養のために必要なのは、やっぱり……

かわいいペットが欲しい。寂しさを埋めて欲しい。心を癒して欲しい。

自分自身の欲を満たすために猫を迎え入れる……ここまでならまだ罪とはいえないので、否定はしません。

ただ、猫も生き物ですから、結果として「思い通りにならない」こともあります。
ならば、もしそうなった時……冷たく突き放すのではなく、改めて家族である猫を見つめ直し、「どうすれば寄ってきてくれるだろう? どうすればこの子と楽しい時間を過ごせるようになるだろう?」と、人間の側から考えられる世の中であってほしい。

 

私はそう願っています。

 

そのために、人間が姿勢を落として猫と目線を合わせ、遠くからでもその様子を眺めながら、猫のためにすべきことを時には気長に、時には粘り強く、物言わぬ猫から聞き出して感じ取る。

 

―― ありきたりであっても、ここに必要なのはやっぱり「愛」なのです。

 

決して一方的な愛ではなく、相手の気持ちまで考えた愛を込めて接することができた時、家族としての猫を「愛猫」と呼ぶに相応しい家庭となるのかもしれません。

これが動物愛護法で定められている「終生飼養」のスタートラインに立つ瞬間ではないでしょうか。

 

猫という生き物は、普段から家の中をワチャワチャと自由気ままに動き回っているように見えていながらも、その何気ない振る舞いや所作を通して、私のような人間に「猫とは?」「猫という生き物とは?」「猫という生き物が持つ命とは?」といった重い命題へのヒントを日々、伝えてくれているようにも感じるのです。

 

私がこれらの命題に対する答えを出せる日が来るのはもっと先になると思いますが、
少しでもその答えを手元へ引き寄せることができるように、私は今日も、猫に学びます。

 

松尾 猛之(まつお たけし)

ねこライフ手帳製作委員会委員長。1級愛玩動物飼養管理士。
webライター、ペット用品メーカー勤務などを経て、2019年2月に愛猫のための生涯使用型手帳「ねこライフ手帳 ベーシック」を発売。手帳の普及を通じて、人間が動物との暮らし方を自発的に考えていくペットライフの形を提案している。自宅では個性的な保護猫3頭に振り回される毎日。